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高校生が一番活動しやすいまち・唐津へ。“場所・機会・つながり”で、主体性を育てる高校生支援NPOの挑戦。

大学・就職で一度地元を離れたあと、唐津に戻り、地域課題の解決に取り組んできた元唐津市議会議員の原さん。現在は、高校生の「居場所」と「挑戦の場」をつくる『NPO法人WeD』の事務局長として、子どもたちの主体性を育む活動に力を注いでいます。

「日本一、高校生が活動しやすいまち・唐津にしたい」と語る原さんに、立ち上げの背景や、高校生たちの成長エピソード、地域との関わり方、そしてこれから描くビジョンについて伺いました。

「場所・機会・つながり」を提供し、主体性を育てる。すべては小さなコミュニティから。

──まず、高校生支援のNPOを立ち上げた経緯と、ミッションを教えてください。

もともとは、僕自身が地元でイベントをしたり、仲間と一緒にまちづくりをしたりする中で、「この活動は、10年20年経ったら自分たちだけでは続けられないよね」と強く感じたことがきっかけでした。となると、次の世代を育てないといけない。そのときに「10歳下」ではもう遅いなと思ったんです。20歳、30歳下となると、中学生・高校生の世代。そこで、「彼らの主体性をどう育てていくか」というテーマが生まれました。

そこで、僕らが提供しなければいけないものは何か。話し合いを重ねて、3つに絞り込みました。「安心して集まれる “場所”」「やってみたいことに挑戦できる “機会”」「地域と出会い、関わる “つながり”」。この3つを、僕たちのミッションでありバリューとして提供していこう、というのがNPOの出発点です。

──立ち上げメンバーは、どういった方々なのでしょうか。

最初は4人でスタートしました。僕は当時、WeDの骨格を造りつつ、市議会議員として政策面や行政との橋渡しを担当しました。代表理事の吉森は現役の学校の先生で、「高校生たちはもっと力があるはずなのに、今の環境ではそのパワーを発揮できていない」という現場感覚から強い問題意識を持っていました。もう1人のメンバーは大学生で、教育分野に興味があり、「人生の岐路に立つ高校生を支えることで何かを変えられるかもしれない」という思いで関わってくれました。そして、市役所の職員が入り、まち全体の視点から支えてくれています。

よく「唐津を盛り上げるために立ち上げたんですよね?」と言われるのですが、正直に言うと、最初からそんな大きな志を掲げていたわけではないんです。むしろ「将来、自分たちと一緒にまちを盛り上げてくれる仲間を増やしたい」という、個人的なモチベーションから始まっています。ただ、その活動が結果的に高校生の成長や地域の変化に繋がっていくことが分かってきました。

──唐津という地域ならではの課題は、どのように捉えておられますか。

一番大きいのは、「世界の狭さ」です。唐津には大学がないこともあり、高校を卒業すると多くの子が一度まちを出ていきます。それ自体はとても良いことなんですが、問題は「戻ってこない」こと。データ上は、唐津に戻ってくるのはわずか3%程度です。そもそも高校生たちは、親や教員以外の大人と接する機会がほとんどありません。どんな仕事があるのか、どんな生き方があるのかを知らないまま、「学力だけで行き先が決まる」ようなルートをたどる子も多い。だからこそ、「世の中にはもっと色々な選択肢があるんだよ」ということに気づいてもらうことが、僕らの設定している大きなテーマです。

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“成果より成長”。高校生と地域が育ち合う、5年間の手ごたえ。

──高校生の主体性を育てるうえで、具体的にどのような工夫をされていますか。

一番意識しているのは、「答えを言わない」ことです。大人は、ついつい正解を教えたくなります。実際、最初の頃は、口を出してしまっていた時期もありました。今は、選択肢を示すことはありますが、決定は高校生に任せています。そして、彼らが選んだことについては、「自分で選んだんだから責任を持とう」と伝えます。主体性とは、「自分で選んで、自分で責任を引き受ける力」だと思うので、そこは徹底しているところです。

──印象的なエピソードや、高校生たちの成長を実感した瞬間はありますか。

正直、エピソードは山ほどあります(笑)。最初は何をするにも毎回「これどうしたらいいですか?」と聞きに来ていた子たちが、僕らが答えないので、だんだん自分たちで考えて動くようになっていきました。分かりやすい高校生の成長で言えば、うちの活動を題材にして総合型選抜試験に臨み、志望する大学に合格した子たちもいますし、「ここの活動があったから、この進路を選びました」という声も毎年のように届きます。

また、高校を卒業して一度唐津を離れたOB・OGが、年に一度の同窓会や忘年会のタイミングで戻ってきてくれるようになりました。市役所に就職したうちのOBの一人が幹事役になって、「帰ってきたらここに集合ね」と半ば強制的に(笑)集めてくれているんです。
そういう「帰ってくる理由」があること自体が、僕らの目指している「唐津の種をまく」というイメージに近いですね。

さらに、うちを卒業した子たちを「ぜひ雇いたい」と言ってくださる企業さんも出てきました。高校生の頃から一緒に活動してきた子の成長を間近で見て、「こういう若者なら、ぜひうちで働いてほしい」と言ってもらえるのは、本当にうれしい評価です。

──活動を始めてから5年間、地域との関わり方にも変化がありましたか。

議員時代も含めて一貫して取り組んできたテーマが、「高校生が使える場所を増やす」ことです。「やる気はあるけれど、場所やお金がなくて一歩を踏み出せない」という状況を改善していきました。一方で、地域との関係には難しさもあります。例えば、高校生がまちなかで文化祭を企画したとき、手づくりのチラシやポスターのクオリティを見て、「もっとちゃんと指導して欲しい」といった声が出たこともあります。挨拶がなかった、連絡が遅かった、といった声もありますね。ただ、僕らが重視しているのは「成果より成長」です。プロ並みのデザインや完璧な段取りを高校生に求めるのではなく、「その不完全さも含めて学びに変えていく」というスタンスについて、理解を求めるようにしています。

──その意味では、「受け入れ側の理解を促進する」という視点も重要になってきそうですね。

まさにそこが、今一番力を入れている部分です。高校生は、いい意味でも悪い意味でも「未熟」です。礼儀もこれから身につけていく段階ですし、社会の常識やコミュニケーションも練習中です。その彼らが地域に飛び出していくわけですから、最初から「きちんと挨拶ができて、礼儀正しくて、一緒に地域を盛り上げてくれる存在」を期待されても、それはちょっと酷です。

一方で、大人の側も「怒り方」を忘れてしまっているところがある。ちょっとした失敗に対して、直接本人にではなく、大人側の我々に伝えてくる。これでは、お互いにとって学びになりません。僕らが地域の方々にお願いしているのは、「高校生を社会人1〜2年目くらいの存在として、一緒に育てるつもりで関わってください」ということです。未熟さを前提に、時には叱り、時には励ましながら関わっていただく。そのためのネットワークや仕組みづくりを、今まさに進めているところです。

日本一高校生が活動しやすいまちへ。
成長の「見える化」と、未来につながる“夢ビル構想”

──今後の展望や、取り組みたいことについて教えてください。

高校生自身や取り巻く環境については、正直、僕らが当初10年くらいで到達できたらいいなと思っていた姿に、かなり近づいてきています。高校生たちは僕らのキャパを超えるほど集まってくれていますし、先輩が後輩を育てる循環も回り始めています。一方で、まだ大きく残っているのが、「お金」と「地域側の文化づくり」の2つです。

これまでは、佐賀県のふるさと納税を活用した制度にかなり助けられてきました。しかし、これだけに頼り切るのではなく、長期の委託事業や企業との連携など、もう少し裾野を広げていく必要があります。そこで今チャレンジしているのが、高校生の成長を「見える化」する仕組みづくりです。

大学などと連携しながら、ルーブリック(評価基準)を用いて、高校生がどんな課題に挑戦し、どんな変化を遂げたのかをデジタル上で記録していくプラットフォームを開発しています。ちょっとテレビゲーム的な世界観で言うと、「ドラゴンクエスト」のようなイメージです。地域が抱える課題を「ダンジョン」として設定し、高校生がそのダンジョンに挑戦して、結果を出すことでレベルアップしていく。活動履歴はポートフォリオとして蓄積され、彼らにとっても「自分はここまでやってきた」と示せる財産になるようにしたいと思っています。

企業さんにとっては、「自社が出した100万円の協賛金で、どの高校生がどのようなチャレンジをして、どのような成長を遂げたのか」が見えるようになる。その対価としてきちんとお金をいただく、という関係性を目指しています。今までのように「海岸清掃をしました」というアウトプットだけで終わるCSRではなく、その先のアウトカム・価値まできちんと可視化して御恩を返していきたいですね。

──ハード面の「夢」についても、構想をお持ちだそうですね。

はい。僕らの中で「夢ビル」と呼んでいる構想があって、3階建てのビルを丸ごと“高校生と地域のための循環拠点”にしたいと考えています。1階は、高校生たちが自由に活動できる居場所。2階は、シェアオフィスとして大人が仕事をする場。3階は、ゲストハウスとして外から来る人が泊まれる場。2階・3階で生まれた収入を、ビルの家賃や高校生の活動費に回していく。そんな循環モデルを構想して、一度は契約書の作成直前まで進んだのですが、現状の資金規模やリスクを考え、「今そこまで無理をすべきではない」と判断していったん立ち止まりました。

ただ、今は別の方が似たようなビルを借りていて、「一緒にやろうか」という話も出てきています。ハード面の完成形は、まだ時間がかかるかもしれませんが、いつか必ず実現したい夢ですね。

──最後に、これから一緒に関わってほしい「大人」や「企業」に向けて、メッセージをお願いします。

僕らが目指しているのは、「日本一、高校生が活動しやすいまち・唐津」です。「唐津の高校生ってすごいよね」「あそこは高校生が主役のまちだよね」と言われるような場所にしたい。そのためには、僕らNPOだけでは到底足りません。高校生たちは、放っておいても伸びていく優秀な子が多いです。だからこそ、これから必要なのは、「その伸びを受け止め、共に育つ大人」が増えることだと思っています。

未熟さも含めて、怒ったり、励ましたりしてくれる大人。「成果」だけでなく、「成長」を一緒に喜んでくれる企業。CSRとしてだけでなく、「将来の仲間づくり」として高校生に投資してくれる組織。そういった方々と一緒に、ゆっくりでも、確実に文化をつくっていきたいですね。

そして、高校生に伝えたいのは、「やりたいことがあるなら、ここを遠慮なく使ってほしい」ということです。唐津の外に出て行くのもいい。でも、そのときに「帰って来たい」と思ったら、いつでも戻ってこられる場所と人がいる。その“唐津の種”を、これからも一緒にまいていけたらうれしいです。

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